それを見て海斗は、失礼にも笑いだした。

「ブッ、あははっ。ほんと、天然だな」

あたし、なんで笑われているんだろう。


いいから乗れよ。と付け足して、後ろに乗る様に促す。

久しぶりにあたしに向かって笑顔を見せて、不覚にもドキドキと胸が締め付けられる。

海斗の意図はまったく理解不能だけど、言われるがままそろりと近寄って、年季の入った自転車にまたがった。


「しっかり掴まれよ、飛ばすぞ」

その言葉は冗談じゃなく、後ろに乗っているというのに全力で飛ばすから、何度も振り落とされた記憶が蘇って、ぎゅっと力を込めて海斗の腰に腕を回す。


「どこ行くのー!?」

早くもお尻が痛くなってきたあたしは、堪らず聞いてみる。


だけど、何も答えてはくれず、海斗の漕ぐ自転車はどんどん住宅地から離れて行く。


こうしていると、毎日のように海斗にへばりついて、遊んでいた頃を思い出しちゃう。

…こんなに大きかったっけ?


知らない間に、海斗の背中はあの頃よりも大きくて、広くて。

なんだかタイムスリップでもしたかのようだった。