「いいからっ!」

このまま帰りたくなかったあたしは、トモくんをどこまでも巻き込もうと改札をくぐる。


「しょうがないなー…」

そうぼやきながらも付き合ってくれるトモくんの優しさに、感謝してポッカリと空いて涼しくなった心を包み隠す。


だからってこんな状態で映画なんて見たところで、ぼんやりとしか思い出せないストーリー。

話題の邦画、恐怖のサスペンスも、あたしの中では悲鳴をあげているだけのツクリモノ。

恋愛ものじゃなかったのがせめてもの救いかもしれない。

タイトルすら忘れそうな映画のスクリーンを、さも面白そうに見入るあたしは、なにをしてるんだろうと、何度も心の中で呟いた。


チラチラと視界の片隅で顔を覗かせる、あのふたりの姿は消えてはくれなかった。