両手でも足りない

そうか。

あたしはきっと、海斗が好きなんだ。

幼馴染みだから。

仲良かったから。

そんな理由じゃなく、単純に海斗が好きなんだ。


気づかされた気持ちに戸惑いつつ、トモくんの言っていた通りだと、なぜか感心してしまう。

認めてしまうのは癪だけど、この胸が苦しい気持ちは否定できない。


「ん?大丈夫か?」

再び口を開いたトモくんは、あたしを気遣ってか優しい口調を続ける。


なのにあたしは、何事もなかったように平然とした態度を取って。


「トモくん!映画!映画行こうよー」

唖然とするトモくんの腕を掴み、改札へと向かおうとした。


「ちょ、青海!なんだよ急に」

あたしの一言によほどびっくりしたのか、目を丸くして瞬きを繰り返す。


「だってせっかくここまで来たのにもったいないじゃん!」

「いや、今の今まで泣いてたやつの台詞かよ!」