両手でも足りない

今に始まったことじゃない。

過去にも何度となくこの出席番号順に悩まされてきた。

口を手で隠した時にはもう遅かった。ちらっと見上げると、鋭い視線を浴びせた海斗と目が合った。


『うるさい、チビ』

この冷たい一言に、クラスのみんなは怯えるどころか。

『さすが五十嵐!クールボーイ!』

海斗と仲のいい村井くんは手の平を合わせパンッと、いい音を響かせて。なぜか盛り上がっちゃてる。


って…。おだててどうすんのよ!なにが“さすが”だ。


海斗のこの冷たい態度といい、[クールボーイ]なんて周りから呼ばれている。

3年生に上がった頃には、海斗のクールボーイぶりはみんな知っていて、クラスメイトたちは面白がって気軽に話しかけたり、笑いを取ってみたり。


1年生の時は鋭い視線と言葉が怖いと恐れられ、近寄る人なんていなかったのに。

2年生に上がった頃には、冷たさに笑顔が取り入れられて、たちまち人気者に豹変。

今や知名度は高くて、海斗を知らない人はいないんだと思う。


でも、海斗のクールな態度は中学に上がってからで。小学校時代までは、こんなんじゃなかった。