散々、チビだのバカだの言われても、ものすごーく気になる。


「わっ、五十嵐くんすごい。9段跳んだ!」

「あーあ、今のでライバル増えた」

「その前からあいつは妙にモテてたしょ」


前の子たちが言うように、海斗はただ跳び箱を跳んだくらいのこと。一瞬で注目の的になれるそんなヤツ。


「さて、じゃあがんばってくんね」

あたしの前に並ぶ子たちは笛の合図で、次々と跳び箱に向かって走っていく。


ヤバイ。緊張してきた。


これで跳べなかったら体育の成績、落ちちゃうよー…。元々悪いのに、更に落ちるようなことがあったら…。


一応、今年受験生。


そんな自分を益々追い詰めるような言葉が、あたしの緊張感を煽る。


「チビ」

ぶっきらぼうな台詞に顔をあげる。突然のことに、かなりマヌケな顔をしているに違いない。

海斗が仏頂面であたしを見下ろしていた。