あたしの目は無意識に、跳び箱9段を跳ぼうとしている海斗へと集中する。


「やっぱいいよね、五十嵐くん」

思わぬ名前にピクッと耳がうごめいた。


2組合同の体育の授業。隣のクラスの女の子が先生の目を盗んでヒソヒソ話ししている。


「えー?そうかな、女子には無愛想じゃない?」


そうそう、ほんと無愛想。

うんうんと頷いてしまいたくなるほど、彼女たちのお喋りに納得してしまう。


あたしの前に並んでいる隣のクラスの子、話しはしたことないけれど、確実にわかるのはあたしより背が高い。


「そこがいいんじゃん。軽くない証拠じゃん」

「やだよ、あんなわかりにくい男。それに彼女いるって噂でしょ?」

「そんなの噂じゃん、見てもいないのにわかんないじゃん」