鏡に向かってつま先立ちしてみたり、両手を頭上まで目一杯上げみたり。

重力に負けるもんかと、鏡の前で屈伸してみたり。どうすれば背が伸びるのか…。

こんなこと毎日やっていたって伸びるわけじゃないのは、よーくわかっているの。

でも、せめてこの無駄な悪あがきくらいはしてもいいよね。

牛乳だって飲むし、食べ物の好き嫌いはないのに。

小さいままなのは…。


「ちょっと、青海ー。お隣り行ってきてくれなーい?」

階下から聞こえる叫び声。


その声にドアを開けて下を覗き込むと、お母さんがなにやら大きな紙袋を手に見上げていた。


「お隣りって、どっち…?」

恐る恐る聞き返したあたし。


「トモくんのほう、海斗くんじゃなくて悪いんだけど。」

と、後のセリフを意味ありげに言うと、続けて。お母さん、手が離せないのよ。と、紙袋を階段の下に置くとリビングへと入って行った。


「またあ?」

もう…。


ブツブツぼやきながら階段を下りる。