MATO




今、会場のほとんどの人が後藤を見ている。あそこに居るのは、紛れも無く後藤だ。なのに、…後藤じゃない気がした。

あたしは他校の女の子よりは後藤のことを知っているけど、それでも後藤のすべてを知っているわけじゃない。他校の女の子に「後藤の何を知っている」と言えるほど、あたしは後藤を知らない。

そう考えると遠い、少し遠い人に思えた。