MATO






「俺、兄貴がいるんだけど」

「うん」

「その兄貴、も弓道やってて…高1のインハイ予選で片目が見えなくなったんだ」

「………?」




弓道のインターハイの地区予選で片目を失った…ということで解釈してもいいのかな。いまいち理解ができない状況で戸惑う




「その時、兄貴は監的室に1番近い観客席にいた。そして第1射場の大前(1番観客席に近い的)で弓を引いていた人の射が崩れて、矢も的の方向に飛ばずに観客席の方まで矢が飛んできた。その矢が兄貴の目を貫いた」

「…………」



そんなことがあるなんて思いもしなかった。弓道をやっていればわかるけど、それは有り得ない話ではない。射が乱れて矢が思いもよらない方向に飛んでいくことは弓道をやっていれば誰でも必ず経験する。その時、運が悪くあたってしまったのは後藤のお兄さんだった。