MATO




後藤が道場に入ってきた。

慣れているのに、ひとつも驕りを感じさせない丁寧な動作。


そう、『いつもの』後藤だ。



「いいね。いつも通り落ち着いてる」


横でゆかりが言った。

やっぱり思うのか、『いつも通り』と。
もしかしたら私が敏感になっているだけかもしれないと思ってたのに。


「そうだね」