MATO




関東大会当日

大会に出るあたしと後藤、そして補助員をするユカリは朝早くから学校に集まって学校が用意してくれた車で金田が運転をして大会会場に向かう。

まだ空は少し薄暗いような朝だから眠くてみんな黙って車に乗っていた。ユカリはもう寝ている。


「佐藤、起きてる?」

声を潜めてあたしを呼ぶ

「なに?」

「いや…特に用はないけど」

「なにそれ」


ユカリを起こさないように小さく笑った。


そして後藤は窓の外を見てまたあたしの名前を呼ぶ。


「佐藤」

「なに、また」

「がんばろうな」


いろいろな意味が込められているような、そんな言葉にあたしは


「……うん」


小さく頷くことしかできなかった。



それから一言でも話したら、あたしの中のいろいろな気持ちが揺らいでしまいそうで後藤に「寝る」と言って後藤を背にして座席のシートを倒した。

頭の中には理由もわからない靄が渦巻いて結局寝ることはできなかった。