「……射は仁の道なり」 後藤の声を掻き消すように「礼記‐射義」の一文を唱和する。 「射は正しきを己に求む」 乙矢(二本目に射る矢)を番え(矢を弓にかけること)る。 「己正くして而して後発す」 弓を円を描くように打ち起こす。 「発して中らざるときは」 そのまま弓手(弓を握っている方の手)を左前に左肩根で弓を押し開く。 「則ち己に勝つ者を怨みず」 そして左右に弓を開く。 「反ってこれを己に求むるのみ」 そして矢を離し、その矢は的を貫く。