相手の声はどう聞いても女性、そのもの。


恐る恐る振り返ってみる。


向こうからは死角になっていてこちらを見ることができないがこちらからは見ることができる。


スーツ姿の綺麗な女性。
サラっと靡(なび)く艶のあるショートの髪。


ズキズキと胸が痛む。


何か理由があるに違いない…。


そう思ってもあたしは不安が拭いきれない。


信じてるけど…好きだから不安になる。


信じたいけど…信じていいのか分からなくなる。


亜鶴より、あたしが1番矛盾してるってことは分かっているけど…この気持ちは止められない。


食べかけのチーズケーキが歪んで見える。


そんな異変に気づいた亜鶴。


「ちょっと…魅夜? 大丈夫?」


不安を表しながら問いかけてくる…何も知らない亜鶴。


「ん…大丈夫…」


掠れた声で返事をする。


だが気づかれないハズがない。


勘が鋭いことに人一倍自信を持っているのだ。


それがいいときもあれば、逆に今みたいに悪いときもある。


「大丈夫だから…気にしないで」


ここで亜鶴に甘えたらあたしはいつまでもダメな気がする。