お昼ご飯を持って来損ねたから、昼休み早々あたしは購買へダッシュする羽目になった。

この高校の購買のパンはその辺の菓子パンより美味しくて、人気のために早くに売り切れてしまうからだ。

十数人の列に並んで、売り切れないかとやきもきする。

おおっ、あの焼きたてメロンパン美味しそう…。でも焼きそばたっぷりのアレも…!

ショーケースに並んだパンに目を輝かせていたとき、にわかに向こうの方が騒がしくなった。

「東雲くん、お昼ご飯一緒に食べようよ~」

移動教室から帰ってきたのであろう東雲が、数人の女子をはべらせてこちらへ向かっていたのだった。

うーわ、たいそうおモテでいらっしゃいますなぁ…

あたしは頭の中で、両手を広げて肩をすくめた。


…げっ!

思いっきり東雲と目が合ってしまった。

急いで逸らそうとしたが、それより早く、東雲の視線を追って、そばにいたサラサラヘアのツリ目の子があたしを見留めた。

うわっと…これ結構ヤバイんじゃない…?

あたしはくるりとショーケースに真正面に向き合った。

が、それが逆に不自然だったのかもしれないと気づいたのは、方向転換した後だった。

「東雲くんも可哀そうよね…あんな子に付き纏われて」

甲高い声が、気の毒がる声色でわざとあたしに聞こえるように言う。

「ああ、あそこで並んでるあの子だっけ?」

「どれ?あたしまだ見てないの」

「あれあれ、あのショーケースにかじりついてる…」

「ふふ、みっともないよねぇ。相当食い意地張ってるんじゃない?」

きゃはははっ、と小馬鹿にした笑いが廊下に響く。

あーはいはい。

勝手に言ってなさいー。

うるさいからさっさとどっか行ってくれーい。

あたしは、下等な言葉を鼻であしらい、徐々に近づいてくる集団が早く通り過ぎるのを待っていた。

「ねぇ、俺って彼女に付き纏われてるっていう風に言われているのかな?」

数メートル先で、東雲が女の子たちに尋ねた。