「だから人の話を聞け!!あたしが!相談者の彼女にされた!!」


「…はあぁ??」


奈緒はさっぱりワケがわからないという顔をしている。

あたしだって意味がわからないよ、ホントに。


あたしは大きくため息をついた。



「とりあえず、相手は?」


「それが…1-6の東雲翔ってヤツなんだけど、奈緒知ってる??」


「しののめ………えぇ!?」


思い当たったのか、奈緒が大きな声を出した。


「知ってるんだ?ど、どんなヤツ??」


あたしは身を乗り出して訊く。

奈緒は目をぱちぱちさせて言った。


「ほら。あんたみたいなのは知らないだろうけどね、東雲翔は超カッコイイって女子の間ですっごい有名な人なのよ!」

言いながら奈緒は、ラインストーンでキラキラにデコレーションした携帯を、ぽいっとあたしに投げた。

画面には、明らかに盗撮っぽい、斜め上から撮った東雲翔の写真。

「その人でしょ?」

「うん」

気品あふれる物腰と取り巻く王子様オーラが女子のハートを鷲掴みし、入学早々告白人数は両手では数えられないほどの人気っぷりだ、と奈緒は説明する。

「へー?」

そうなのか?確かに芸能人っぽかったけど。

っていうか、奈緒ってばなんでこんなの持ってるんだ?


「ちょっと葉月…あんたホントに会ったんだよね?」

「うん」

「うんって……カッコよかったでしょ!?」

「まあまあ?」


はー、と奈緒はため息をつく。


「その反応の薄さ!イケメンパパのせいであんたの目、ホント狂っちゃったよね。」

「や、別にそんなことないと思うんだけど。」

「いやいや、普通の子は見惚れるか赤くなるか一目惚れするか鼻血吹くか卒倒するから。」

「…それ最後の方、普通じゃないでしょ。」


奈緒の大げさな表現にさっとツッコミを入れる。

普通なの!と奈緒は反撃に出た。

いやしかし…そんなヤツなら頼まれた意味もわかるか。


「っていうか、どういうコトかちゃんと説明してよ。」


今度は奈緒がこっちに身を乗り出してくる。


あたしは事の次第を説明した。