「こんばんは~!」


「いらっしゃい、葉月ちゃん。奈緒なら部屋にいるわよ~」


「ありがと、おばさん」


タタタッと上り慣れた階段を駆け上がり、ウサギのネームプレートが掛かったドアを開ける。


「ちょっと奈緒聞いてよーー!!」

「おー来た来た、待ってたよ~ん♪」

くるりと回転椅子をこちらに向け、フランス人形が満面の笑みであたしを迎えてくれる。

彼女は、幼馴染で親友の唐沢奈緒。

今日もキャラメル色の髪がくるっくるのふわっふわで、アイメイクもバッチリだ。


「どうだった?イケメンパパの代理」


奈緒が椅子から降りてテーブルに向かい合う。

朝の登校時に彼女に会い、お父さんの入院やあたしのわけのわからない頼まれごとを話していた。

正確には、愚痴っていた、かな。


「それがさぁ…」

「女の子殺到?もみくちゃ??」


間髪入れずに奈緒が訊いてくる。

いや、ちょっと待ってあたしまだ何も言ってない…


「じゃなくて、」

「もしかして修羅場!?なんであんたみたいなのがここにいるのよ!!てか??」


おい奈緒、あんた絶対さっきまで変なメロドラマ見てたな?

ていうか「あんたみたいなの」って失礼!!


「彼女に」

「えぇ!?マジ?まさか先生浮気してたの??うわー…」

「コラ、違うってば」

「じゃあ彼女だと間違われてイジメが始まっ…」


コイツはあたしの話を聞く気があるのか!?


「彼女にされたの!!」

「は?やっぱ先生彼女いたの!?で、その彼女に何された…」


ああもう!!!!