携帯が騒がしく振動した。

あ~…めんどくさい。

ディスプレイの着信相手を見て相沢彩香はため息をついた。
『っ相沢さん!?』
携帯をしばらく見つめた後、電話に出ると相手はかなり慌てた声だった。
「はい。」
『今どこにいるの!?』
相手はイライラを隠せないのか彩香にまくし立てるように言った。
「帰り道ですけ…『アナタ5:00からシフト入ってるの分かってる!?』
時間はとっくに5:00を過ぎている。
もちろんそんなこと承知の上だ。
「あー…。」
『早く来なさい!』
「というか、バイト辞めます。」
『は…?』
全く想像していなかった彩香の言葉に理解出来ず困惑した声が受話器からもれる。
「という事で…店長によろしく言っといて下さ~い。」
『ちょっと待っ…!』


――プツッ


制止の言葉も聞かずに勢いよく電源を切った。