姫密桜

それは、違う・・・

「違わないよ

 確かに私の母は、貴女の
 お母さんから、父を奪い
 父の愛を手に入れた
 
 だけど、私は生まれて一度も
 心の底から楽しげに笑ってる
 母の姿を見た事はない・・」
 
遠慮がちに微笑む、母の姿
しか、梓は知らない。

「父に遠慮して過ごしている
 母の姿・・・」

父親が仕事から帰ってくる時間
になると、決まって母親は
ぴりぴりと神経を尖らせていた

結婚前に梓を妊娠した事で
堅い家柄の実家とは絶縁。

父親の両親、梓の祖父母
にも反対された結婚。

「許されない愛の果てには
 冷えきった家庭・・・
 
 それが、現実・・・」