姫密桜

私を強く抱き締める、槇

両腕に力を込めて、きつく
この私の体を締め上げる。

貴方の愛が私へと流れる・・・

学校からほんの少しだけ離れた
誰もいないこの場所で、私達は
抱き合う。

槇の耳元で囁く声

「お願い

 聞かないで」

貴方は、何度も頷いた。

「ああ、聞かない」

「早く帰って来てね」

「ああ」

槇の後姿を見つめ、佇む桜

ここは、家・・・

玄関の扉に手をかける、桜

庭桜の木・・・ざわざわ

カノジョの葉が風に揺れる

真実など知らなければ
良かった・・・