姫密桜

私は、槇の言葉の中に
潜む大切な想いに気づく事
ができずに、ただ泣くだけで
何も分かっていなかった。

槇が進学をやめて働きたいと
言ったのは、二人の未来を
守る為には必要なこと・・・

槇がくだした、決心

大きな決断・・・

それなのに、私は
今と何も代わらない
環境のままで、貴方の傍に
居たいと願い、貴方の想い
を踏み躙る。

『俺は
 サクラだけのもの』

「マキ、これはお前の人生
 お前が決めた進路を
 俺はもう何も言わない」

「あなた?」

父の左腕を掴む母の手に
そっと触れる父の右手。

「決心は変わらないのか?」

「はい」