姫密桜

その頃、リビングでは・・・

「あなた
 今日は、仕事で
 遅くなるって・・・?」

「そのはずだったんだが
 思ったよりも人手がいて
 早く片付いたよ」

「そうだったの」

キッチンで料理をお皿に
盛っていた母は手を洗い
布巾で拭いた後

父の脱いだスーツを
ハンガーに吊るす。

「そうだ
 俺の飯、あるか?
 
 無いなら、何か
 出前を取ってくれ」

「大丈夫よ
 マキの分があるから」

「何だ、マキの奴
 食べないのか?」