姫密桜

私が、水を零さないように
手元を見つめながら
槇の部屋へと、向かう途中

玄関のドアが開いた。

帰って来たのは、お父さんと
櫂ちゃんだった。

「ただいま」

「ただいま
 
 サクラ、お前
 まだ、制服なのか?」

「・・・うん
 
 おかえりなさい」

櫂ちゃんの言葉に、今始めて
自分が帰宅してから、ずっと
制服のままで過ごしていた事
に気が付いた。

私はずっと、槇と折口さんの
事が気になって着替える事も
忘れていた。

「サクラ、土産のケーキ
 後で、皆で食べよう」

「うん、カイちゃん
 ありがとう」