暖かくて力強い手。
握り締めると、ぐいっと引き上げられた。
軽々と。
とん。
ステージに到着すると、一瞬、そっと抱きとめられる。
類は、
必死で、平常心を保った。
ここでドキドキしてたら、酸欠で歌えなくなる。
『二人はルシアンのライブで出会ったそうです。
今日は、その、ルシアンのヴォーカルに、
来てもらいました』
「本当は新婦は、ルシアンのヴォーカルに惚れてたんだぞ~」
武藤の声が茶々を入れて、笑い声が起こる。
「でも、それは前のヴォーカルだ。
今のヴォーカルだったら、オレが惚れてるな」
また、笑い声が起こる。

