グレーな吐息~せぴあなタメ息③~


暖かくて力強い手。

握り締めると、ぐいっと引き上げられた。

軽々と。

とん。

ステージに到着すると、一瞬、そっと抱きとめられる。

類は、

必死で、平常心を保った。


ここでドキドキしてたら、酸欠で歌えなくなる。


『二人はルシアンのライブで出会ったそうです。

今日は、その、ルシアンのヴォーカルに、

来てもらいました』

「本当は新婦は、ルシアンのヴォーカルに惚れてたんだぞ~」

武藤の声が茶々を入れて、笑い声が起こる。

「でも、それは前のヴォーカルだ。

今のヴォーカルだったら、オレが惚れてるな」

また、笑い声が起こる。