グレーな吐息~せぴあなタメ息③~


「タイトル言っても分からないよね」

言って、軽く息を吸い込むと、

歌いだした。

力を込めない、優しい声。

こんなに力を抜いて歌っているのに、

恐ろしく、上手くて、綺麗な声で。

何のガードもなかった心に、素直にスコンと入ってきた。

それだけじゃなくて、

その奥底にいたらしい魂を、直接くすぐってくる。

いや、くすぐってるんじゃないな。

揺さぶられてる。

悟さんがこっちを向いて、

歌が途切れた。

少し、乱暴気味に、ブレーキがかかる。

「どうかした!?」

悟が覗き込んでくる。

驚いて、心配されてる。

・・・なんで?

何かが、頬を這う。

無意識にそれをぬぐう。

水滴。

え?

涙?

何で?

あたしの目から伝い落ちたらしい。