グレーな吐息~せぴあなタメ息③~


「ああ、あと10分」

「え?何?車、苦手なの?」

「うーうん。平気。

そうじゃなくて、悟さんを独り占めできる、

貴重な時間が、あと10分!!って思って」

「貴重・・・?」

「・・・だって、あたし、ライブ中の悟さん見て、

秒殺されたんだもん。

一瞬でファンになっちゃった。

その、すごいヒトが、今、隣にいるんだなって。

ちょっと、すごいよ、この感動」

言いながら、


ああ、これっていい。


って思った。



ファンって言葉はとっても便利だ。

悟への好意を、こういう意味で、

喋っても大丈夫なんだから。

「他のファンの子、ごめんなさい。

この瞬間を見られても、あたしのこと、

殴ってやる、とか思わないで」