「ああ、あと10分」
「え?何?車、苦手なの?」
「うーうん。平気。
そうじゃなくて、悟さんを独り占めできる、
貴重な時間が、あと10分!!って思って」
「貴重・・・?」
「・・・だって、あたし、ライブ中の悟さん見て、
秒殺されたんだもん。
一瞬でファンになっちゃった。
その、すごいヒトが、今、隣にいるんだなって。
ちょっと、すごいよ、この感動」
言いながら、
ああ、これっていい。
って思った。
ファンって言葉はとっても便利だ。
悟への好意を、こういう意味で、
喋っても大丈夫なんだから。
「他のファンの子、ごめんなさい。
この瞬間を見られても、あたしのこと、
殴ってやる、とか思わないで」

