グレーな吐息~せぴあなタメ息③~

何でもない動きなのに、

いちいち視線が泳いでしまう。

「あの、目的地は近いんですか?」

「『ですか?』」

「・・・近い・・・の?」

「うん10分くらいかな。

機材と大事な荷物がなかったら、走ってでもいける」

「大事な荷物?」

「うん、ルシアンからの貴重なカリモノ」


ああ、あたしか。

「あたしだけなら、悟さんと一緒に走ってけるよ」

「そうだな。走って・・・もうちょっと体力つけないと。

類、ライブの度、倒れてるんだろ?

気をつけないと。・・・出発します」

車が動き出す。