(奏輔視線)



2人でため息をつきながら、もう一度あちらさんを見てみればさっきの光景と何ら変わりはなかった。



先ほど、玲は心配そうに大丈夫かと聞いたのと同時に壱葉ちゃんの頭にポンと手を置いていたのだ。しかも、壱葉ちゃんの震えは無し。


2人とも気付いてねェみたいだけど、かなり優しい表情をしている。笑顔ってわけじゃねェんだけど、ずっと親友やってた俺でも玲があんな表情を女に向けるなんて初めて見たくらいだ。壱葉ちゃんも壱葉ちゃんで、俺と話しているときのような硬い雰囲気は微塵もない。



「玲くんには恐怖心無いんだ…」


俺と同じことを考えていたのか、ポツリと華己ちゃんは呟いた。


「やっぱりそう思う?」


「だって壱葉があんな表情、男に向けるのなんて初めて見たもん」


「俺も玲があんな表情して女を見てるのにはびっくりしてる」


「懐いたわね、壱葉。」


「マジで」


「うん」




やっぱくっつくのかなーと隣でウキウキしながら独り言を言っている華己ちゃんを尻目にふと頭の中をある事が掠め、一瞬にしてボヤ〜と玲たちを見ていた脳みそが目を覚ました。



「玲!やばい、時間!」


「は?……っマジかよ!」


「後でね、華己ちゃん!」



華己ちゃんに別れを告げ、玲に軽く声をかけてから廊下を走り出す。




マジやべェよ!



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