(華己視線)


「(まあ、変える気もないけど)」

チラリと壁に掛かっている時計を見ればあと5分程で6時限目の始まりだった。


「おかしい…」


そもそも壱葉が授業に出ないことがまずおかしいことなのだ。お昼くらい抜いたって大丈夫なくらいの図太い神経の持ち主なのに。


―…東階段、行ってみるしかないか


ガタッと音を鳴らし立ち上がり少し早歩きで教室を後にする。廊下に出れば道を少しばかり開ける同級生に嫌気がさしながら東階段への道を急ぐ。


―…男と2人きり、か。


忘れ去りたい過去を少しばかり思い出しながら壱葉は立ち直ったんだと自分に言い聞かせる。



『助け、て…。たすけてタ、スケ…テ…。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。やだやだやだやだやだやだやだやだや、だよ…』



――――……壱葉、帰ろ…。壱葉?



『誰も来ない誰も来ない誰も来ない誰も来ない誰も来ないだれもこないだれもこないダレモコナイダレモ…コナイ…』



――――……え、壱葉っ!?




『ひっ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だああああ』



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