気がついた時、ぶたさんはもう木に登り始めていました。 そしてぜんぜん登れないまま、ぶたさんは木からすべり落ちました。 そもそもぶたさんは、木になんて登れないのでした。

 だけど、ぶたさんはあきらめません。 体はスリキズだらけでアチコチ痛いけど、ぶたさんは必死で木に登ろうとしていました。 何度も何度も。 何度も何度も。

 うさぎさんが何か話しかけてくれているようですが、イッシンフランのぶたさんには何も聞こえません。 かならず風船を取ってみせます、とだけ答えて、ぶたさんは木登りを繰り返しました。


 どすん、どすん。


 体の大きなぶたさんが、ぶつかるようにして木にしがみつく音と、地面に落ちてひびく音とが、リズムを刻むようにひびきわたります。


 どすん、どすん。


 どすん、どすん。