恋する乙女


「そういえばさ、昔はナツ・・・こんなんじゃなかったんだよな~」



気まずそうに静かに言ってきた。


少し、間が空いた。



「ま、まぁね・・・」





思い出したくない過去。


中1の頃。


北海道の冬。


その頃は、彼氏がいた。


そいつの名は、長澤幸一。


変な眼鏡してて、ケンカ強くて(ちょっと不良な感じ)面白くて、一緒にいると楽しいし、幸せだった・・・。


ある冬の日の帰り。


幸一と並んで歩いていた。


すると、いきなり幸一がぴたっと止まり、



「あ、俺学校に忘れ物した!!」



と言った。


でも、空にはねずみ色の雲があった。



「えっ!?

 明日にしようよ!

 ほら、雲行きも怪しいしさ」



と、否定した。