ドライヴ~飴色の写真~

   〈5〉

「……篠さん。神様はなぜ私達人間に足を2本授けてくださったかわかりますか」

「人間というフォルムのクオリティの為か」

「クラッチと、アクセル・ブレーキを同時に踏む為だー!」


 私が車内で叫ぶと、篠さんはさもうるさそうに顔をしかめた。

「そんなの単なる後付けだろう。つまり、足が2本あることを前提に車の構造が決まった」

「フォルムがどうとか言ってる人になんか言われたくないですよ」

「だいたい、クラッチの意味が全くわからん」

「クラッチとは、エンジンの動力を車輪に伝えたり、切ったりする装置です。発進や停止、ギアチェンジの時に使います。って何回言ったらわかってくれるんですか」

「言葉で言われてもピンとこないんだ」

「ああー、もう、バカ」


 私は頭を抱えて、やむを得ず暴言を吐いた。