キミとぼくとのあい言葉。【完】


その店はいわゆるバーってやつで、大人向けの店だった。ざっと見渡す。男…4人に女4人か。

なんだちょうどじゃねーか。


そう思って席に座ろうとしたとき、一人の女が目に入った。

一人で酎ハイをグビグビ飲んでいる、女の色気も微塵(みじん)も感じさせないやつがさっきからおれと葛城を見ている。


一人余ってんのか、あいつ。

すると葛城がそいつの隣の席に座った。おれも生ビールを頼んで、その横に座る。



…こいつ、どっかで会ったことあるような‥。

いや、気のせいか…。


「あたしぃ~彼氏居ないんですよぉ」

いきなり自分のことについて熱く語り始めた。そうとう酔ってやがる。


それに対して葛城もその話を熱心に聞いている。

おいおい…おれの存在忘れてんな。



あ~まじで帰りたい…。

だいたい、おれはこんなとこに来る暇はねえんだよ。


あいつに逢うために、いやあいつの顔を見るためにわざわざ日本に来たんだ。