「おとうさん、では真理子を時間までに
待ち合わせ場所に連れてきて
いただけますか?
すみません。」

「わかってます。
打ち合わせ通りですね。」

「打ち合わせ?」


真理子は俺達の顔を交互に
不思議そうに見ていた。
俺は真理子の頭をポンポンと叩いて


「オシャレしてきてね」
そう言った。


「じゃ、車出しておくから」
両親は先に歩き出した。


俺は周りを見渡して
誰もいないのを確認し
真理子を抱きしめた。


「今夜は素敵な夜になるから・・・
イヤ…絶対してもらうから・・・
覚悟して来いよ。」


「やだ・・・何企んでるの?」


俺は真理子の左手の薬指にキスをした。


「愛してる・・・・」


「こんなとこで?」


真理子は恥ずかしそうにしていた。


「俺のこと愛してる?」


「愛してる
大好き 死ぬほど大好き
ん?死ぬほどって…死ななくてもいいよね~
何言ってるのかしら私ったら・・・・」

真理子が笑った。


「じゃあ、後でね~」


真理子の背中を見送りながら
今晩のプロポーズの言葉を復唱していた。


振り向いた真理子が
「錬~~愛してる~~~」

笑顔でそう叫んで手を振った



「バイバ~イ」


それが笑顔の真理子を見た最後の姿だった・・・・。