「卒アルに書いてよ!」


あちこちで聞こえる同じような言葉。



かったるい式も終わり、先生からの湿っぽい話も終わった。


もう既に学校を出ていいはずなのに

別れがたいからか、何なのか


俺を含めてみんなまだこの小さな箱の中に残っている。






何を学んだのかなんて

はっきり言ってちゃんと覚えているわけじゃない。


唯一覚えてるって言ったら


アイツらと授業をサボってだべったり

悪さばっかして先生に怒られたり


あとは


好きなヤツの笑顔を見てたくらい。



「柴田くん、書いてよ」


机から顔を上げると、目の前には沢山書かれた卒アルを持った

一人の女。


「あ、あぁ、別にいいけど」

渡されたペンを持って何を書こうか考える。




はっきり言って柄本と話すのはこれが初めてだった。

毎日同じクラスで

飽きないくらい見ていたはずなのに。


「私も書きたいな、柴田くんのに」

「別にいいけど。」

「やった」

柄本が笑いながら手をパンっと合わせた。


コイツの笑顔を見るのも、今日で最後か。


そう思うと何だろう、

少しだけ心に穴が空いたような感じがする。

なんて、俺かなり詩人じゃね?


「ハイ、書けたよ」