ぐにっ!

香奈の指は俺の頬を思い切りつねっていた。

「ひて―!」

痛さで涙ぐむ俺に構わずギリギリと頬をつねる香奈。

「ほへんっ!ほへんっへ!」

「えっちな廉にはお仕置きだ!」

俺の得意セリフを口にしてようやく頬から指を離す。

赤くなってヒリヒリしている頬を擦っていた俺の額にベン!と何かを張りつけた。

ポロっと落ちてきた物を見ると香奈に取り上げられたゴムだった…。



「香奈ぁ」

「…………………」

「香奈ってば」

「……………………」

呼びかけても返事しない。

怒ってんのかなぁ…?

「香…」
「あのねっ」

俺の呼びかけをかき消すように香奈が口を開いた。

俺が視線で先を促すと香奈は目を伏せて言った。

「私も廉の事大好きだよ。でも…まだ心の準備が出来てないっていうか…ちょっと怖いっていうか…。だからもう少し私に時間をくれないかな」

香奈の言葉に胸を突かれ俺は大きくうなだれた。

先輩の話にあてられて香奈の気持ちを無視してた。

きっとお互いの気持ちが重なった時に自然とそうなるんで、俺だけの思いだけでどうなるものでもないんだ。