「へ―。たまたまジーパンのポケットにこーゆーのが入ってたと言いたいのね」

返す言葉もない俺に香奈がさらに追い打ちをかける。

「ど―なんですかぁ?廉くん?」

出たっ!
香奈の『廉くん』

香奈が俺を『廉くん』と呼ぶ時は本気の本気で怒ってる時だ。

同じ怒られるならいっそ本音を言ってしまおうと半分自棄になった俺は顔を上げた。

「なっ、何よ?」

まさか反撃してくるなんて思ってなかったのか香奈が少し狼狽える。

「俺は香奈が大好きだ。大事にしたいって思ってる反面、やっぱ好きな女にはもっと触れたいとも思ってる。それって変な事か?」

今度は香奈が言葉に詰まった。

「香奈は俺に触られんの嫌?」

香奈はぎこちなく首を横に振る。

「じゃあ触っていい?」

微かに頷く。

思わぬ形勢逆転に気をよくした俺は香奈の手を取り指を絡めて手を繋いだ。

「もっと近くに行ってもいい?」

「うん…」

おっ?
だんだん機嫌が直ってきてる?

いやいや、ここで焦ってまた香奈を怒らせたら今度こそ当分口をきいてもらえなくなる。