私には嫌いな奴がいる。

大迫 廉(おおさこ れん)。

高2になって、初めて同じクラスになったこの男。

面識もなかったのに、初めてかけられた言葉に耳を疑った。

「ちょっとそこ退いてくんない。ちんちくりん」

確かにドア近くでお喋りしてて塞いでたかもしれない。
でも普通、初対面の女の子に『ちんちくりん』なんて言う!?

何て失礼な奴!

この時から大迫廉は私の中の大嫌いなヤツリストに名を連ねる事になった。



「大迫ってカッコいいよねー」

はぁ?どこが?

もろに不満が顔に出たのか、私の顔を見て涼子が慌てて口を閉じる。

「私の前で大迫の話はしないでよ」

大迫って名前を口にするのも気分悪いっ!

不機嫌全開な私に、涼子は上目遣いで恐る恐る口を開く。

「香奈ってばまだ根に持ってんの?」

私がちんちくりん呼ばわりされた時に涼子もその場にいた。

「涼子はちんちくりんって言われてないから、呑気にカッコいいなんて言ってられんのよ。いくら顔がよくても性格悪きゃ…」

私がまくし立ててると涼子が唇に指を当てて、黙れの合図をする。