「先生、もう眼鏡禁止だからね」

 その髪型も!とあたしは指を突き付けた。


「何故です?」

 分からないと首を傾げた先生の胸にしがみつく。

 衣服の上からでも分かる。
 まだしっとりと熱を持った先生の体。


「ダメなものはダメ!」

 見上げて睨むと、先生は眉を下げて微笑んだ。


「分かりました。大切な彼女のお願いですからね」


“大切な彼女”


 そのフレーズに胸がキュンと疼く。

 胸に顔を埋めて、赤くなった頬を隠した。

 先生の手が背中に回されて、すっぽりと包まれる。


 ――幸せ…


 大好きな人に愛される。

 それだけで、こんなにも満たされてあったかくなるんだ。


 この幸せを、他の女子に邪魔されるなんて、冗談じゃない。


 余韻に浸るあたしに、頭上からフッと笑んだ息が落ちてくる。


「ではその代わり、毎日放課後にここに来て下さいね」

「えっ…?」

 顔を上げると、柔らかく笑んだ先生の顔。


「放課後なら、鍵を掛けやすいですしね」


 でもその笑顔には相応しくない、先生の言葉。

「それって――」

 意味する所に、更に頬が上気する。

 あたしを抱きしめたまま身を屈めた先生は、耳元近くで囁いた。



「…まだまだ、全然足りませんよ」