「いつもこんなに痛むんですか?」


 先生に渡された薬を水で飲み込んでから、あたしは頷いた。


「あまり酷いのも心配ですし、一度病院で診てもらって下さいね」

「はい…」


 横になるように促されて、素直に従う。


「将来、赤ちゃんが出来なくなったら大変ですからね」


 そんな、保健医としてのセリフ、聞きたくないよ。

 早く一人になりたくて。
 そうじゃないと、今にも泣き出してしまいそうだから。


 カーテン越しに消えた先生に、小さく安堵の息を吐く。



「……私は最低、三人は欲しいですからね」


 揺れるカーテンの奥、聞こえるか聞こえないかの、小さな声。

 一瞬、それがどういう意味なのか、誰に向けられた言葉なのか分からなかった。


 赤ちゃん、三人って………、


 ええええっ!!??


 ちょっと今のはどういう意味?
 そういう意味!?



 それ以上何も言わず遠ざかる足音に、あたしも何も言えなくて。

 真っ赤になった顔を手で覆いながら、頭の中でグルグルと先生の言葉の真意を考えてるうちに、薬の効果か、睡魔に襲われた。



 カーテン越しにささやかれた、言葉。


 ――ねえ、先生。

 あたしちょっとは、期待してもいいのかな?

 このまま貴方を好きでいても、いいですか……?






~end