嘘ついて大袈裟にして、怒られるよね…


 膝の上の手を、ぎゅっと握って見つめる。

 でもそれを先生の細い指が触れて、大きな手の平が包み込んだ。


 ―――え?


 視線を上げた先。

 先生の、安堵した表情。

 あたしの手を包む先生の手に力が込められたのが、分かった。


「よかった…!」


 ほっと息を吐いて、次の瞬間破顔した。


「…怒ってないの?」

 あたし、嘘ついたのに。


 恐る恐る尋ねたあたしに、先生は目を細めて優しく微笑んだ。


「怒ってませんよ?大きな病気じゃなくて、本当に良かった…」


 胸を突かれた。



 ――その顔でそのセリフ。

 ねぇ、先生。ズルイよ。

 先生として言ってるって分かってるのに。
 先生はみんなの保健の先生なのに。


 ……これ以上、好きにさせないで。


「――っ、」

「痛みますか?今鎮痛剤を――」


 うずくまったあたしに、先生は慌てて立ち上がった。


 違うよ、先生。

 涙が滲むのは、お腹が痛いからじゃない。

 それよりももっと、胸が痛いよ……