安堵に吐いた先生の息が、頭上に落とされる。


「よかった…」


 背中に回った先生の腕があたしを閉じ込めている。

 頬に感じるのは、白衣の布地。
 鼻先を掠めるシャボンの香り。

 そして奥から伝わる、先生の熱。


 ぎゅうっと胸が締め付けられる。


 あたしは、屈んだ先生に抱きしめられるように受け止められていた。


「まったく、貴女は…」

 そう言って、先生はまたあたしを抱えて、ベッドに座らせた。


「大丈夫ですか?」


 優しい微笑み。

 長めの前髪を耳に掛ける仕草に、ドキリとする。


 離れようとする先生の白衣の裾を、ぎゅっと握った。


「……ごめんなさい」


 俯きながら呟くように謝る。


「珠洲白さん?」


 白衣を握っていた手をそっと離して、先生はあたしの膝の上に置いた。
 中腰になった先生の視線が、ぶつかる。


「あたし、本当は……生理痛なの」

「……え――?」


 切れ長な二重の、先生の瞳が揺れる。


「生理、痛…?」


 目を瞬いて尋ねる先生に、頷いた。


「はい…」