ぶたさん2

　その光景を、うさぎさんとねこさんは、正反対の場所から見ていました。

　ゼロヨンカーの車体ではなく、前輪に身体を挟まれたぶたさんは、止まらないタイヤの回転に巻き込まれ、体をドンドン小さくしていきます。　ぶたさんは真っ黒でしたから、夜の闇の中、運転手も轢くまで、その存在に気付かなかったのかもしれません。　少し遅れて、急いでブレーキをかけたような音が聞こえました。

　しゅ、しゅ、しゅ、と小気味よい音を出しながら、車はスリップ状態で前の方に滑り進んでいきます。　ぶたさんの身体から出てきたラードが、オイルのような働きをしているのでしょうか。　なかなか止まる気配は訪れず、車全体が回転運動を加えながら、更に前の方へと滑り進んでいきます。

　手だったものや足だったものをちぎり飛ばしながら、数10m進んだところで、やっと車は止まりました。　ぶたさんを挟み込んだタイヤはパンクし、車体部分も生き物にぶつかったとは思えないほどへこんでいました。　ぶたさんの肉体がどれほど鍛えられていたか、よくわかります。