突然、止まっていた時間が動き出しました。

 同時に、ぶたさんは車道の二人に向かって駆け出していました。



 答えは出ない、出ないけど、ぶたさんはもう、何も考えられなくなっていました。 となれば、自分の心の思うがままに、思った通りに委ねる以外、ない。 思考を投げだしたぶたさんは、結末を考えぬまま、身体の動くままに地面を蹴りあげました。

 車道に出てすぐだったねこさんには、一瞬で追いつきました。 そのまま、ありったけの力でねこさんを後ろの方向に突き飛ばします。 反動を利用し、そのままうさぎさんの元へ。 車が視界の端に映ります。

 大きくジャンプしたぶたさんは、そのまま強く、強くうさぎさんを突き飛ばしました。 うさぎさんが、飛び出した歩道の更に奥へ吹き飛んでいくのが見えます。

 そう、この方法ならば、二人を助ける事が可能だったのです。 必要なのは、自分を捨てる覚悟。 とばく場でうたかたの勝利に酔っていた時、似たような何かを得た実感はありました。 しかし、やってみるのと感じるのとでは、ずいぶんと違うものだなあ・・・。

 重力に導かれ、地面にゆっくりと落下していくぶたさんの横で、目を開けていられないほどの光が溢れます。 再び高速回転する思考の中でぶたさんは、ああ、最低な人生だったなあ、何も学ばない人生だったなあ、でもせめて、僕の大切な二人が生きてさえいてくれれば、僕自身は空っぽでも、二人の人生がその分だけ続くのなら、報われ―――