「雅樹は子供欲しくないんだ」 あたしは決めの一言を繰り出した。 「なんだよ、その言い方」 「だって、こんな都会のマンションで子育てなんて無理。環境が悪すぎる」 「だけど、妊娠したらなお更、家が仕事場に近い方が便利だろ?」 「フレックス使って、時差出勤する」 「大きな病院も近いし」 「出産は実家の側でしたいし、小児科通うのに、大学病院とかないでしょ」 「……」 「わかった。越そう」