合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです

ビルを出るなり、タクシーを停め、雅樹はあたしを無理やり押し込めた。

「ハイアットへ」

雅樹が口にしたのは、あたし達がかつて会い背を重ねたホテルの名だった。

「どういうつもり……」

と言いかけた口を塞がれた。

目眩がするような熱いキス。

あたしは、我を忘れて、その全てに答えていた。

心が振るえ、自然と目から涙が零れた。

嗚呼、あたしが求めていたのは、この腕の中。

正樹に抱かれるこの温もりの中にあったのだと悟った。

あなたが居れば、それだけでいい。

それだけで救われると……

「裕子、俺と結婚してくれ」

「え?」

突然の言葉に、目を見開いた。

「ずっと、言いたくても言えなかった。今なら言える。もう待てない。俺と結婚してくれ」

「で、でも、あたしは……あたしは……」

と言おうとして、胸が詰まった。