合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです

「結局、悪者なんだよ、姉貴の元カレ。最初から、それ認めろっての。俺の大事な姉上さまを、なに粗末に扱ってんだっての」

口は悪いけど、樹があたしを大切に思う気持ちが伝わってきて、嬉しかった。

「ありがと。でも、大丈夫。あたし以外と冷静なんだ、今回は。完全敗北宣言って感じかな」

「なに言ってんの?」

「だってさ、やっぱりあたしの完全な負けだよ。雅樹と一緒にいたいって気持ちとか、子供を守りたいって気持ちとか、愛を貫きたいって気持ちとか、全てにね。あたしは、全てにおいて一歩も二歩も足りなかった」

「それは違うよ、姉貴。姉貴は優し過ぎるんだ。いつでも自分より他人の立場や気持ちを優先させて、自分は一歩引いて譲っちまう。まぁ、そこが男前っうか、女々しくないっつうか、姉貴らしいってとこかな」

あ、樹が彼女に振られるのも、もしかして優し過ぎるから?

白石もしかり? 

あたしは、なんか可笑しくなって笑ってしまった。

「でも、俺は、姉貴には幸せになってもらいたい」

「うん、ありがと。頑張るよ」

あたしは素直に頷いていた。