合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです

「あぁ、まぁ、そういうことなら」

と課長はおもむろに書類を裂き破り、ゴミ箱へ捨てた。

席に戻ろうと、何気なく机上の上に視線を移した時、小さなフォトフレームに入った写真に目が留まる。

「おじょうさんですか?」

「嗚呼、去年の十月で4歳になった」

「可愛いですね」

「嗚呼、可愛い。子どもがこんなに可愛いものだとは思わなかった」

写真を目を細めて見つめるその横顔に、胸が小さく疼いた。

「そうですか……じゃ、わたし、外回り出るんで、失礼します」

小さく頭を下げて、視線をそらした。

「ああ、そうか、がんばってくれ」

踵を返すあたしの心は暗い。

あたし普通の顔してられたよね? 笑えてたよね?