合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです

あたしは一晩病院に泊まることになった。

栄養点滴と鎮静剤と睡眠薬を処方され、ベットに縛りつけられた。

お陰で、その夜はぐっすり眠れたようで、朝の目覚めは爽快だった。

「おはよ、あねき」

朝食を摂って、着替えを済ませ、病室を後にしようとしたところに樹が現れた。

「なに? あんた仕事は?」

「大切な姉上さまが、倒れて入院したんだ、会社も休むさ」

「馬鹿……」

あたしは、樹の腹目がけてパンチを力なく繰り出した。

「下であいつが待ってたぞ」

「え?」

「姉貴の元カレ」

「雅樹?」

「そう、そいつ」

「嘘……」

「どうする? お引取り願う?」

「ううん、大丈夫。多分、彼は上司としての立場でここに居るんだと思う」

「まさか? まぁ、姉貴がそう思いたいんなら、そういうことにしとこうか。俺、車で来てるから、そのままマンションまで送ってくよ。取り敢えず、心の準備して、下、降りようか」

こういうとこ、樹は優しい。

なんで、彼女に振られるのか、そこのとこが謎。

姉の贔屓目かな。なかなかいい奴だと思うんだけど。