合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです

「この部屋、一人暮らしにゃ広すぎじゃね?」

リビングから、樹の問いかける声がする。

「俺、一緒に住んでやろうか? 家賃払うし」

「や~だ。あんたの魂胆は見え見えよ。あたしはあんたの世話するなんて真っ平ごめん。母さんにいつまでも甘えてりゃいいのよ、このマザコン」

「ちっ、いい考えだと思うんだけどな」

「だいたい、あんた、洗濯も掃除も、まして料理なんてしたこともないじゃない。まずそっから、努力すんのね。努力が嫌なら、真面目に結婚相手でも見つけりゃいいのよ」

あたしは、胸元の少し大きく開いた紫とピンクの縦じまのニットワンピースにレギンスを合わせ、上から羽織る白いパシュミナシルクのストールを手にとった。

「そう簡単に見つかりゃ、苦労しないさ……」

樹は、見た目は結構イケルのに、恋愛は苦手。ダラダラと付き合った挙句、振られるのがいつものパターン。どうも、何か肝心のものが欠けているらしい。

「あと、十分待って。髪乾かすから」

あたしは、洗面に戻り、タオルドライした髪をドライヤーで乾かし始める。

ドライヤーの轟音の中、また、『ピン、ポン♪』と来客を知らせるチャイムの音がした。

「樹、出てくれる? 宅配だったら、荷物は宅配ボックスにって」