合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです

「裕子さん、明日の『支援する会』で社内保育室の体験談話して貰えますか?」

七月の半ば、退社間近の企画室に白石がひょっこり顔を見せた。

で、第一声がこれ。

「でも、その会って就業時間後でしょ。あたし裕樹を迎えに行かないと」

「裕樹ちゃんの件なら、もう木村課長と交渉済みですよ。
明日は俺達が速攻で課長を五時退社させますから。
お迎えは木村課長に任せてください」

「何それ。手回し良すぎない?」

「こっちも色々と都合があるんです。
八月のワークショップ開催前に、いくつか講座を設けてあるんでね」

「ワークショップ? 講座?」

「裕子さんの担当は『社内保育室体験記』。
で、来週は木村課長の『育児休暇体験記』でお願いしてあります」

あたしはあまりの段取りの良さに、感嘆を漏らす。

「分かった。
白石達にはお世話になってるし、断れないわね。
で、どんなこと話せばいいの?」

「ま、ざっと保育室の概要、一日の流れ、仕事への影響、感想、問題点。
保育室利用希望者も来ると思うんで、できるだけ具体的な話がいいですね」